ニイハオ中国(つばめ)

戸田ゼミコラムのアーカイブです。このコラムはすでに連載を終了されています。

つばめが昼食に特に炒め物や肉料理を作らなくても、
冷蔵庫には、ほとんど毎日、
前日の晩の炒め物や
肉料理の残りが入っている。
だから、主食とスープor粥を考えるだけで、
昼食の形は、ほぼ整う。

といっても、今まで義母の料理を食べるばかりで、
全く料理をしてこなかったつばめが、
簡単なものとはいえ、昼食のメニューを考え、
それらしきものを作ったりできるのは、
ひとえに6年間義母の料理を食べてきた
年月の賜物である。

義父はすぐ、
「お前作ったことあるのか」
というが、作ったことはなくても、
どういうものなのかというのは、
舌がだいたい覚えている。
義父がいう「かぼちゃのガーダスープ」
というのがどんな形状でどんな味なのか、
「緑豆麺が入ったスープ」といったら、

「ああ、白菜の細切りと緑豆と雑穀で作った麺を入れて
 うすい塩味をつけた、あのスープだな」

と、すぐ分かるのである。
そしてどんなものを作りたいのかさえ分かれば、
今はネットで何でも調べられる時代だし、
自分が食べたことのある味に近づこうと
色々調べたり、何度も試行錯誤しているうちに、
だんだんそれなりのものもできるようになってくる。

他の家庭では同じ名前のスープでも、
作り方や味が全然違ったりするので、
それぞれの家庭には、それぞれの食文化ともいえるものが
あるのだなぁ、と改めて気づいた次第。
(我が家のスープは、主に白菜、ほうれん草、
 かぼちゃの3種類。時々小白菜や冬瓜も。
 全て先に油で軽く具を炒めて塩・醤油で味付けした後に
 水を入れて、最後に再び味を調えて出来上がり。)

6年間義母の作る料理を食べてきた意味、
義母の遺した遺産を
いつのまにか受け継いでいる自分を
改めて発見しているこの頃のつばめである。

その後の義父は、相変わらず
つばめが新しい料理を作ろうとするたびに、

「お前、いんげん豆の肉焼きそばなんて作ったことあるのか?
 作れもしないくせに何でも食べたがって。。。
 いんげん豆はちゃんと火を通さないと中毒になるぞ。
 おい、塩入れすぎじゃないか?お湯もっと入れないと」

と、自分も作ったことないくせに、
口だけは忙しいことこの上ない義父であったが、
いざ出来上がると結構ご機嫌で食べ、
おかわりまでしたりするのだから、
つばめの残り物を使った即席昼食も、
まぁなんとか合格ラインなのではないかと思っている。

こうして1か月、義父との昼食をともにして
思ったことは、

「私、なぜか昼食の中華的献立をどんどん思いつく」

ということ。
献立といっても、残り物を中心に考えているので
たいしたメニューを考えるわけではないが、
白ご飯+白菜と薄切り肉入りすっぱいスープだとか、
肉まん野菜まんor軟餅+粟粥など、
主食&スープor粥など、1食の組み合わせの仕方が
何となく分かるのだ。

これは中国共通ということでは全然ないと思うが、
あくまで、我が家では、主食以外に、
だいたいスープかお粥を準備する。
そして、主食によって、スープがいいのか
粥がいいのか、粥といっても、米粥なのか、
粟粥やトウモロコシ粥がいいのかというのが
変わってくる。
その「我が家の献立ルール」とでもいうべきものを
自然に身につけている自分に気づいた。

《肉類》
肉は、我が家(義父母宅?)では煮込みと決まっていて、
鶏肉だろうと、豚肉だろうと、牛肉だろうと、羊肉だろうと、
すべて大きな塊肉を何時間もかけて煮込むのだ。
北京では割合ポピュラーな「宮爆鶏丁」や「魚香肉丝」
などの料理が食卓に上がったことは一度もない。
鶏肉は一匹丸ごと買ってきて、さばいて煮込む。
義母は、週に1、2回、煮込み肉を作り、
その他の日は、残り物の肉を温めたり、
煮込んだ塊肉を薄切りにしたものが炒め物に入ったり、
別の料理っぽく少し加工したものなどが食卓に上がった。
新しく作った煮込み肉は、蒸したての白ご飯とともに
食べることが多く、そんな日は、
家族みんなの顔に笑顔がこぼれる。

《野菜類》
野菜炒めは毎食1、2種類新しいものを作り、
その他に前日の残り物も並ぶ。

炒め物以外に、ご飯を蒸す際に
さつまいもやじゃがいも、にんじん、長いも等の
根菜類を一緒に蒸し、皮をむいてそのまま食べる。
時々、かぼちゃを蒸して食べたり、
蒸しナスにニンニク&ゴマ油のたれをかけたものが出る。
他にほうれん草のごま油和えなど。

サラダはほんの時々、ゆで野菜のサラダが出ることもあるが、
生で食べる野菜はキュウリ(黒酢和え)とトマト(砂糖がけ)、
そして葉っぱ類や青大根、ラディッシュ、長ネギ等は、
みそをつけてかじって食べるのだ。

昼は、麺や餃子など、
主食と肉、野菜が一緒に取れるような
メニューが多かったが、義母は毎食、
主食の種類と調理法を変えることで
バラエティーを出していた。

《主食類》
マントウ(家では作らず、決まった店で購入。
残ったマントウは薄切りにしてフライパンで焼くことも。)
糖三角(三角のマントウの真ん中に溶けた黒砂糖が入っている主食。
家では作らず、決まった店で購入。)
あんまん(家では作らず、決まった店で購入。)
ご飯(蒸しご飯、残ったご飯は、翌日お粥になるか、
ネギ卵チャーハン、トマト卵チャーハンになる。)
麺(我が家ではトマト卵麺、ジャージャー麺、
いんげん豆の焼そばの三種類)
餃子(肉、ニラ)
豚まん・羊肉まん、ニラまん
烙餅(=ラオビン、インドのナンのような主食、
残り物のラオビンを細切りにして炒めると「炒餅」になる)
軟餅(我が家では西葫芦のチヂミのみ)
焼餅(=ジャオビン、膨らみ損ねたパイのような主食。
家では作らず、決まった店で購入。)
餡餅(=シァビン、肉ミンチお焼きとニラお焼き)
胡饼(=フービン、トウモロコシ粉の生地を伸ばして
カリカリに焼いたもの)
ウオトウ(トウモロコシ粉をこねて円錐状にして蒸した主食)

とざっと思いつくだけでも、
これだけの主食がある。

そして、これら常食する主食の中で、
どれが夜向けで、どれが昼向けかということも、
6年間義母の献立を食べてきたつばめには、
何となく分かるのである。


つづく。

こんな感じで、
トマト卵麺やジャージャー麺など、
自分で作れる料理の時は上機嫌、
そうでなければ何かと不機嫌な義父であったが、
ある日をきっかけに、かなり義父の態度がやわらいだ。

その日の昼食は、蒸したてご飯と肉団子入り白菜春雨スープ。
肉団子の種を作って1階に下りると、

「お前、肉団子なんて作ったことあるのか?
 肉の臭み消しの長ネギやショウガは入れたのか?」

と、自分も分からないくせにあれこれと口を挟む義父。

「今までの昼食で、以前に私が作ったことのあるものなんて
 ひとつもないじゃない」

と心の中で毒づきながら、まぁまぁやってみましょう、
と義父をなだめ、そのまま作り続けるつばめ。

ところがこれが、義父の口に合ったのである。
スープを一口飲んで、

「うまい!」

と義父一言。心配した肉団子も

「いける!」

とすこぶる笑顔。
久しぶりにおいしいものを食べたという
笑顔である。

つばめとしては、肉団子をもう少し柔らかく作れたらなぁ、
と思ったけれど、とにかく、義父に気に入ってもらえたことが
うれしかった。

翌日から、義父との昼食をめぐるやりとりが
ずいぶんやりやすくなった。
電話の開口一番、

「今日は何作るんだ?」

と、もう完全につばめが考えたメニューを
一緒に食べるということを前提にした
口調である。
つばめがメニューを告げ、買ってきてほしい物とか
お粥の準備とか、事前に切ったりしておいてもらいたいものを
言っておけば、快く引き受けてくれるようになった。

とにもかくにも、つばめの作る料理
(というほどのものでもないけど!)に
少しだけ信頼を置いてもらえるようになったことで
義父とのコミュニケーションが取りやすくなり、
多少ほっとしている最近のつばめである。


つづく。

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