ニイハオ中国(つばめ)

戸田ゼミコラムのアーカイブです。このコラムはすでに連載を終了されています。

さて、ラオビンに太刀魚を包んで食べ、
エビ粥をすすった日の翌日、
つばめが考えたメニューは、
残り物の肉まんカリカリ焼きと粟のお粥。
(野菜はいつも、前日の残りの炒め物や、
湯むきトマトの砂糖がけや、キュウリの黒酢和え、
ゆで野菜サラダなどで済ませている。
たまに出来合いの総菜を購入。)
何もひっかかることはないだろうと思われたのに、
電話でこのメニューを伝えると、
またもや義父、不機嫌。

1階に降りると義父、開口一番、

「トウモロコシ粉があんなに余っているのに、
 なんで粟のお粥なんだ」。

どうやら義父は、トウモロコシ粥が飲みたかったけど、
つばめに「自分の食べたい物を作って食べる」
と宣言された手前、それを言い出せなかったようだ。
つばめの感覚では、肉まん類には粟のお粥が合うと
思っただけだったんだけど。。。

しかしこれは、進歩である。
つばめが考えたメニューを食べる、
ということを前提にしているからこそ、
こんな愚痴が出てくるのである。

「思いつかなかっただけなので、次は教えてください」

と言って、その場を収めた。

ご機嫌だったのは、金曜日のジャージャー麺。
義父にとって、自分で作ったものを食べるというのは
とても気分のいいものらしい。

つばめたちが

「おいしい!」

と言うと、誇らしげな笑顔を見せる義父。

つばめとしては中華だろうと日本食だろうと、
自分が作りたいという気持ちだが、
義父との昼食は、やっぱりできるだけ義父に
作ってもらうようにしたほうがよさそうだ、
そう改めて思った1週間だった。

トマト麺を自分で作ってご満悦だった義父ですが、
翌週以降も、上機嫌と不機嫌の繰り返し。

月曜日の朝10時、

「お義父さんがまた西葫芦を買ってきてくれたので、
 もう一度西葫芦の軟餅にしようと思っています。
 時間があったら、粟のお粥を炊いといてもらえますか。
 それと、外に行く時間があったら、
 稲香村で『素十錦(野菜や豆腐類など10種が混ざった冷菜)』を
 買ってきてもらえたらうれしいです」

とお願い。
メニューは全て、義父の好みに合わせている。
義父はもちろん、色よい返事。

1階に下りてみると、

「稲香村で素十錦を買ったら、つばめが言っていた
 ビーチ(という野菜)が入っていないようだったので、
 もう一度買い直したんだ」

と義父、2つの袋を出した。
つばめは別にビーチが入っていようがいまいがかまわなく、
素十錦の説明をするのに、ビーチとかが入ったやつ、
と言っただけだったのだが、
くそまじめな義父は、同じものを2回も買ったのだった。
こんなにたくさん食べきれないのは
ちょっと考えたら分かるのに、
全く融通がきかないのだ。

しかしそう思ったことはおくびにも出さず、

「ありがとうございます」

とつばめ。

さて、鍋を見ると、粟のお粥が鍋に1/3ほど。

「少し少ないんじゃないですかねぇ・・・
 お湯足しましょうか?」

というと、

「いや、ちゃんとお碗2杯分水を入れたんだから、
 足りるはずだ。余ったらまた、
 残り物を食べないといけないだろ」

と義父。結局そのまま作ったが、
できあがった粟のお粥は、見るからに少なく、
粟粥が大好きなはずの義父は、
遠慮して一口も飲まなかった。

軟餅のほうは、つばめがさりげなく作り方を説明すると、
義父が「自分が作る」と言い出した。
見ると少し小麦粉の量が多すぎるように思ったので、
ちょっと水を足しましょうか、と言うと、義父、

「いや、これでいいんだ!」

と怒るので、そのまま義父に任せることにした。
結局、「軟餅」という名前なのに
かなりかためのチヂミに仕上がった。

義父は自分の作ったチヂミがおいしくなかったようで、
半分ぐらい残し、2歳のふたり目ちゃんも食べなかったが、
つばめは1枚完食した。

翌日、つばめが考えたメニューは、ラオビン。
週末外食した際に持ち帰った
残り物のエビ粥と濃い味付けの太刀魚があったので、
ラオビンにくるんで食べるといいかな、と思ったのだ。

しかし電話での義父は、なぜか不機嫌。
1階に下りていくと、先にインスタントラーメンを
食べていた義父、開口一番、

「こんなに残り物があるのに、
 なんで新しくラオビン作るんだ」

とつばめに抗議。

「お義父さんこそ、こんなに残り物があるのに、
 なんでインスタントラーメン食べてるんですか。
残り物があるから、ラオビン作るんです」

とつばめが説明すると、
義父、ふくれていたが、つばめがラオビンの生地を
取り出すと、伸ばして焼くのを手伝ってくれた。
「私よりずっと伸ばすの上手です♪」
とほめまくるつばめ。
ほめられるとまんざらでもない義父なのだった。


つづく。

さて、義父との昼食4日目、
朝10時に1階に電話したつばめ、

「私はラオビン(インドのナンのような主食)を
 作ろうと思っていて、
 6階で生地を作って持って下りますので、
 お義父さん、もし時間があったら
 焼くのを手伝ってもらえませんか」

とお願いしてみた。
メニューの相談は、しなかった。
相談しても、お義父さんは何にも思いつかないのだと
分かったし、昨日一応、つばめは自分の好きな物を
作って食べると宣言してある。
しかしメニューは、義父の好きそうな
ラオビンにしておいた。

さて、約束の時間に1階に下りると、
相変わらず先にインスタントラーメンを食べていた
義父であったが、ラオビンを焼くのは
手伝ってくれた(しかし食べなかった)。

ここへきてつばめ、
義父の考えがだんだん分かってきた。

「ああ、私が作って食べさせてあげるっていうのが、
 お父さんのプライドに触ってしまうのか。
 じゃあ、どんどんお義父さんにお願いします、
 って言って、色々手伝ってもらうのがいいかも」

そう思ったつばめ、翌日の朝10時、

「今日の昼は、トマト卵めんにしようと思うのですが、
 お義父さん、もし時間があったら、麺を買いに行って
 もらえますか。そして、トマトを洗って
 切っておいてもらえたらうれしいんですけど。」

と丁寧にお願い。

「分かった、分かった♪」

義父の返事はすこぶる良好。
声まで弾んでいるようだ。

約束の時間に1階に下りてみると、
なんともう、トマトと卵のめんができていた。
卵の入れ方が分からなかったようで、
お粥のようなぐちゃぐちゃ麺になっていたけど、

「おいしい、おいしい」

と言いながら食べたつばめ。
義父も一緒に食べながらうれしそう。

義父が自分で料理を作る気になったのなら、
作ってもらおう、
どんなにまずくても、決してまずいとは言わないでおこう、
そう思ったつばめであった。


つづく。

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