その後の義父は、相変わらず
つばめが新しい料理を作ろうとするたびに、

「お前、いんげん豆の肉焼きそばなんて作ったことあるのか?
 作れもしないくせに何でも食べたがって。。。
 いんげん豆はちゃんと火を通さないと中毒になるぞ。
 おい、塩入れすぎじゃないか?お湯もっと入れないと」

と、自分も作ったことないくせに、
口だけは忙しいことこの上ない義父であったが、
いざ出来上がると結構ご機嫌で食べ、
おかわりまでしたりするのだから、
つばめの残り物を使った即席昼食も、
まぁなんとか合格ラインなのではないかと思っている。

こうして1か月、義父との昼食をともにして
思ったことは、

「私、なぜか昼食の中華的献立をどんどん思いつく」

ということ。
献立といっても、残り物を中心に考えているので
たいしたメニューを考えるわけではないが、
白ご飯+白菜と薄切り肉入りすっぱいスープだとか、
肉まん野菜まんor軟餅+粟粥など、
主食&スープor粥など、1食の組み合わせの仕方が
何となく分かるのだ。

これは中国共通ということでは全然ないと思うが、
あくまで、我が家では、主食以外に、
だいたいスープかお粥を準備する。
そして、主食によって、スープがいいのか
粥がいいのか、粥といっても、米粥なのか、
粟粥やトウモロコシ粥がいいのかというのが
変わってくる。
その「我が家の献立ルール」とでもいうべきものを
自然に身につけている自分に気づいた。

《肉類》
肉は、我が家(義父母宅?)では煮込みと決まっていて、
鶏肉だろうと、豚肉だろうと、牛肉だろうと、羊肉だろうと、
すべて大きな塊肉を何時間もかけて煮込むのだ。
北京では割合ポピュラーな「宮爆鶏丁」や「魚香肉丝」
などの料理が食卓に上がったことは一度もない。
鶏肉は一匹丸ごと買ってきて、さばいて煮込む。
義母は、週に1、2回、煮込み肉を作り、
その他の日は、残り物の肉を温めたり、
煮込んだ塊肉を薄切りにしたものが炒め物に入ったり、
別の料理っぽく少し加工したものなどが食卓に上がった。
新しく作った煮込み肉は、蒸したての白ご飯とともに
食べることが多く、そんな日は、
家族みんなの顔に笑顔がこぼれる。

《野菜類》
野菜炒めは毎食1、2種類新しいものを作り、
その他に前日の残り物も並ぶ。

炒め物以外に、ご飯を蒸す際に
さつまいもやじゃがいも、にんじん、長いも等の
根菜類を一緒に蒸し、皮をむいてそのまま食べる。
時々、かぼちゃを蒸して食べたり、
蒸しナスにニンニク&ゴマ油のたれをかけたものが出る。
他にほうれん草のごま油和えなど。

サラダはほんの時々、ゆで野菜のサラダが出ることもあるが、
生で食べる野菜はキュウリ(黒酢和え)とトマト(砂糖がけ)、
そして葉っぱ類や青大根、ラディッシュ、長ネギ等は、
みそをつけてかじって食べるのだ。

昼は、麺や餃子など、
主食と肉、野菜が一緒に取れるような
メニューが多かったが、義母は毎食、
主食の種類と調理法を変えることで
バラエティーを出していた。

《主食類》
マントウ(家では作らず、決まった店で購入。
残ったマントウは薄切りにしてフライパンで焼くことも。)
糖三角(三角のマントウの真ん中に溶けた黒砂糖が入っている主食。
家では作らず、決まった店で購入。)
あんまん(家では作らず、決まった店で購入。)
ご飯(蒸しご飯、残ったご飯は、翌日お粥になるか、
ネギ卵チャーハン、トマト卵チャーハンになる。)
麺(我が家ではトマト卵麺、ジャージャー麺、
いんげん豆の焼そばの三種類)
餃子(肉、ニラ)
豚まん・羊肉まん、ニラまん
烙餅(=ラオビン、インドのナンのような主食、
残り物のラオビンを細切りにして炒めると「炒餅」になる)
軟餅(我が家では西葫芦のチヂミのみ)
焼餅(=ジャオビン、膨らみ損ねたパイのような主食。
家では作らず、決まった店で購入。)
餡餅(=シァビン、肉ミンチお焼きとニラお焼き)
胡饼(=フービン、トウモロコシ粉の生地を伸ばして
カリカリに焼いたもの)
ウオトウ(トウモロコシ粉をこねて円錐状にして蒸した主食)

とざっと思いつくだけでも、
これだけの主食がある。

そして、これら常食する主食の中で、
どれが夜向けで、どれが昼向けかということも、
6年間義母の献立を食べてきたつばめには、
何となく分かるのである。


つづく。