さて、義父との昼食4日目、
朝10時に1階に電話したつばめ、

「私はラオビン(インドのナンのような主食)を
 作ろうと思っていて、
 6階で生地を作って持って下りますので、
 お義父さん、もし時間があったら
 焼くのを手伝ってもらえませんか」

とお願いしてみた。
メニューの相談は、しなかった。
相談しても、お義父さんは何にも思いつかないのだと
分かったし、昨日一応、つばめは自分の好きな物を
作って食べると宣言してある。
しかしメニューは、義父の好きそうな
ラオビンにしておいた。

さて、約束の時間に1階に下りると、
相変わらず先にインスタントラーメンを食べていた
義父であったが、ラオビンを焼くのは
手伝ってくれた(しかし食べなかった)。

ここへきてつばめ、
義父の考えがだんだん分かってきた。

「ああ、私が作って食べさせてあげるっていうのが、
 お父さんのプライドに触ってしまうのか。
 じゃあ、どんどんお義父さんにお願いします、
 って言って、色々手伝ってもらうのがいいかも」

そう思ったつばめ、翌日の朝10時、

「今日の昼は、トマト卵めんにしようと思うのですが、
 お義父さん、もし時間があったら、麺を買いに行って
 もらえますか。そして、トマトを洗って
 切っておいてもらえたらうれしいんですけど。」

と丁寧にお願い。

「分かった、分かった♪」

義父の返事はすこぶる良好。
声まで弾んでいるようだ。

約束の時間に1階に下りてみると、
なんともう、トマトと卵のめんができていた。
卵の入れ方が分からなかったようで、
お粥のようなぐちゃぐちゃ麺になっていたけど、

「おいしい、おいしい」

と言いながら食べたつばめ。
義父も一緒に食べながらうれしそう。

義父が自分で料理を作る気になったのなら、
作ってもらおう、
どんなにまずくても、決してまずいとは言わないでおこう、
そう思ったつばめであった。


つづく。